導入事例

株式会社大林組

3,000台のタブレット端末で作業の効率化と建設品質の向上を実現。ソリトンシステムズの「NetAttest EPS」と「NetAttest EPS-ap」を採用し、無線ネットワークの導入・運用における課題を払拭。

株式会社大林組
  • わずか3ヶ月でタブレット端末3,000台の展開を完了
  • デジタル証明書を配付し無線LANの安全性と利便性を両立
  • 高い信頼性と柔軟な拡張性をもつ認証システムを構築

施工図面の持ち込み現場と事務所を往復する職員の姿

 大林組は、1892年(明治25 年)の創業以来、社訓として受け継がれてきた“良く、速く、廉(やす)く”というものづくりの姿勢を貫き、東京中央停車場(現 東京駅)や阪神甲子園球場、大阪城天守閣復旧、青函トンネルなど歴史的建造物の施工に挑戦してきた。

 同社独自の建築新技術と高い品質管理手法は業界内で確固たる地位を築いており、六本木ヒルズ森タワーや東京スカイツリー、明石海峡大橋、東京湾アクアラインなど、多くの日本のランドマーク的プロジェクトの成功に結実している。

 これらプロジェクトの成功には、刻々と変化する状況の正確な把握と、迅速かつ的確な対応が必要不可欠だ。現場の職員が取り扱う情報は、建築物ごとに仕様や施工方法、使用する部材、人員構成などが異なるため膨大かつ多岐にわたる。これに対し、同社では情報を効率的に処理する目的でモバイルパソコンやPDAなどのIT技術を積極的に取り入れ効率化してきたが、その一方で依然として現場には膨大な図面が持ち込まれ、頻繁に現場と事務所を往復する職員の姿も見られた。

品質・安全管理の向上のためタブレット導入 無線LANのセキュリティ確保が課題に

 建築業界では日々の品質・安全管理が何よりも重要である。2011年、同社では、大量の印刷物や職員の移動が必要な従来型の現場施工管理からの脱却が必要と考え、更なる変革に着手した。

 変革後のワークスタイルを『現場に居ながらにして、最新の情報を確認し現況の反映や共有などの業務処理も完結できる』こととし、実現するための手段としてスマートデバイスの導入を掲げた。スマートデバイスは近年急速に業務導入が進むスマートフォンやタブレット端末の総称であり、その特長である機動性や高度な通信機能、精細なディスプレイを活用することで、目指す効果が得られると期待された。

 このワークスタイル改革の担当者として抜擢されたのが、グローバルICT推進室 施工ICT推進課長の堀内 英行氏だ。

「品質・安全管理の精度向上は当社にとっての最重要課題です。早期の実現を強く求められます。 また、作り上げたシステムは利用者の利便性を損なわず、安全かつ信頼できるものでなければなりません」と堀内氏は語る。

 堀内氏は早速、2011年1月よりタブレット端末(iPad)のフィールドテストを開始。端末に対応する現場検査支援システムの開発も進め、実地試験の開始から8ヶ月後の2011年9月には従来のPDAを利用した検査システム「GLYPHSHOT」シリーズのタブレット版の公開にもこぎつけた。

 テスト結果は同社にとって十分に満足のいくものであったが、全社的な導入を検討していくなかで、堀内氏を悩ませたのがセキュリティ対策である。

「期待した効果を得るためには社内ネットワークへの参加が必要不可欠です。タブレット端末では無線(Wi-Fi)ネットワーク環境を必要としますが、当社ではこれまでセキュリティ上の懸念から有線ネットワークを主に利用してきました。 導入を進めるためには、この懸念を払拭する必要がありました」と堀内氏。

 一般的に、無線ネットワークを導入する場合は有線ネットワークと比較しセキュリティ面で一層の注意を払わなければならない。 通信の盗聴を防止するとともに、不適切な人物や端末によるネットワーク侵入を排除する仕組みが不可欠だ。

 スマートデバイスのように同一機種が広く流通している端末を対象とする場合は、端末認証に重きを置く場合が多い。堀内氏は、正規端末を厳格に区別する手段として最高レベルのセキュリティ強度を実現できるデジタル証明書による認証に注目し、無線アクセスポイントとネットワーク認証用の製品選定に取り掛かった。

デジタル証明書による端末認証3,000台のタブレットを3ヶ月で展開完了

 端末認証に用いるデジタル証明書には大きく2種類ある。公的に信頼された認証局が発行するパブリック証明書と、独自に構築した認証局で発行するプライベート証明書である。

「当社のセキュリティポリシーに柔軟に対応できるプライベート証明書を選択しました。また、プライベート証明書を発行できる製品としては、クラウドサービス、ソフトウェア、アプライアンスで提供されるものなどがありましたが、システム拡張や日常運用の容易さを考えるとアプライアンス型の製品が最適に思えました」と堀内氏。

 堀内氏が数ある製品の中から、機能や価格面での比較に加えて、製品実績や開発メーカーが持つノウハウを総合的に判断し絞り込んだのが、NetAttest EPSだ。「限られた期間のなかで、安定したシステムを確実に構築する必要がありました。失敗の許されない今回のプロジェクトにおいては、ネットワーク機器との幅広い連携実績、豊富な導入実績を持つNetAttest EPSしか選択肢はありませんでした」と語る。

 NetAttest EPSは株式会社ソリトンシステムズが開発し、2003 年より販売しているRADIUS 認証サーバーである。 IEEE802.1X EAP認証に対応するRADIUSサービス、デジタル証明書の発行管理、ユーザー情報の内部管理機能のほか、各種の導入・運用補助機能を1台のアプライアンスとして提供する。

 NetAttest EPS を用いたシステム構築は、大きな問題もなく当初の計画通り6月上旬から始まり、タブレット端末の配付が開始された8月末には完了した。「かなり厳しい日程でしたが当初の計画通り完了できました。NetAttest EPS の高い完成度に加えて、同製品の専用オプションNetAttest EPS-apの採用により、タブレット端末3,000台のキッティング工程を大幅に短縮できた点が決定打でした」と堀内氏。

安全・安心で利便性の高いシステム更なる業務改革を計画中

 現在、タブレット端末に対応する現場検査システムとして、1)鉄筋の検査記録と工事写真を一括管理する「配筋検査システム」、 2)マンションなどの仕上げ工事の不具合箇所を指摘する「仕上げ検査システム」、 3)設備機器や配管などの設置・敷設状況を確認する「設備検査システム」が稼働し、高い効果をあげている。

 同社が無線LANアクセスポイントを設置している場所であれば、ネットワーク設定の変更やパスワード入力をすることなく接続でき、職員にも好評だという。「標準的な技術を採用したことで、端末・機器の仕様に依存するような問題も少なくなり、これまで行ってきた現場ごとの疑似環境構築の手間も削減できました。稼働後の障害も一切なく満足しています」という堀内氏は、機器の調達や技術支援などの面でもソリトンシステムズの厚いサポートも大きかったと導入当時をふりかえる。

 今回、実行したワークスタイルの改革は、場所にとらわれない『現場に居ながらにして』の業務完遂を可能にした。職員が費やさざるを得なかった場所移動などの"非効率的"な時間も、今後は施工管理に充てられ、同社の建設品質を更に高めていくことになるだろう。

 当初、200台の試験導入から始まったタブレット端末による業務改革は今後4,000台近くにまで拡張される見込みだ。また、いつでも、どこでも、簡単かつ安全に接続できるネットワークを整備した恩恵は、タブレット端末に限定されるものではない。同社が保有するパーソナルコンピュータに対する無線ネットワークの開放や、海外拠点への展開なども検討しているという堀内氏は「NetAttest EPSのデジタル証明書発行・認証機能を、更に広範囲で活用していきたいと考えています」と締めくくった。

お忙しい中、有り難うございました。

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